狭心症とは動脈硬化が進行して心臓の筋肉に酸素と栄養を送っている冠動脈が細くなって、血液の流れが悪くなった状態をいい、さらに進んで冠動脈が詰まってしまった状態を心筋梗塞といいます。
原因・症状
生まれてから休むことなく伸縮を繰り返している心臓へは心臓表面の冠動脈を通った血液が酸素と栄養を送り届けています。その冠動脈の動脈硬化が進行すると血管が細くなって血液の循環が悪くなります。その結果、心筋細胞に充分な酸素や栄養が届かなくなって心臓に負担が生じ、胸の圧迫感や痛みなど狭心症の症状が出るようになります。
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狭心症は痛みの発作を繰り返すのが特徴で、みぞおちから左胸にかけて痛みや重苦しさを感じ、圧迫されたり、しめつけられたりするような「狭心痛」という独特の痛みが5~6分間続きます。
重い荷物を運んだり、階段を上ったり、走ったり、興奮したり心臓に負担がかかったとき発作を起こすケース(労作狭心症)と、睡眠中や安静時に、冠動脈が痙攣して発作が起こるケース(安静狭心症)があります。過度の飲酒や、たばこ、ストレスなども狭心症の発作を誘発させます。発作が30分以上続く場合は心筋梗塞が疑われます。
心筋梗塞は、冠動脈の一部が詰まって血液が流れなくなり、酸素の供給が途絶えてしまった心筋細胞が壊死してしまう病気です。心筋梗塞になると「胸の中が焼けるような」「ナイフで突き刺されるような」「万力で絞められたような」などと表現される強烈な痛みに襲われ、命をおとす危険性があります。発作が起きてから24時間以内の死亡率が非常に高く、緊急の救命治療が必要です。
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狭心症・心筋梗塞の漢方治療
狭心症のことを漢方では「心痛」といい、症状がそのまま病名になっています。古典では卒心痛、厥心痛、真心痛、胸痺、久心痛などの病名が使われています。治療は、胸を塞いでいる「痰濁」(飲食の不摂生等によって溜まった病理物質のこと)や「瘀血」(血行障害のこと)を取り除く方法で行います。心臓の虚血状態のことを「心血瘀阻」といい、瘀血を取り除く事を「活血化瘀」といいます。
寒がりで冷えによって発作が誘発されやすいタイプは当帰四逆加呉茱萸生姜湯、肥満があり痰濁が気の流れを阻害しているタイプには栝楼薤白半夏湯、胸部の瘀血を取り除く血府逐瘀湯などを服用します。
現代になって中国政府が漢方と西洋医学を結合して国家プロジェクトで開発した虚血性心疾患の特効薬に「冠心II号方」という漢方薬があります。冠心II号方には川芎、丹参、赤芍、紅花、降香5種類の生薬が配合されています。いずれも活血化瘀を促す漢方生薬で、丹参2に対してほかの生薬はそれぞれ1の割合で処方され5種類の生薬が一体となって血行障害を取り除きます。
丹参はシソ科タンジンの根、紅花はキク科ベニバナの花冠、赤芍はキンポウ科シャクヤクの根を川芎はセリ科植物センキュウの根茎、降香はミカン科コウコウの木部を乾燥させた生薬です。 冠心II号方は日本で入手出来ませんが、それを基にして作った冠元顆粒という顆粒状の生薬製剤が「中年以降、または高血圧傾向がある方の頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸に。」の効能で厚生労働省に認可されて市販されています。
冠心II号方」に丹参、紅花、赤芍、川芎、降香の5種類の生薬が配合されているのに対し「冠元顆粒」には丹参、紅花、赤芍、川芎、木香、香附子の6種類が配合されています。4種類の生薬は同じで、降香を代用する生薬として木香、香附子が配合されていますから「冠心II号方」とほぼ同様の効果が期待できます。狭心症だけではなく高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、脳卒中の家族歴など、動脈硬化の危険因子をお持ちの方にはぜひお勧めしたい漢方製剤です。
漢方薬局からのアドバイス
狭心症や心筋梗塞は生命にかかわる病気ですから、西洋医学の治療も併用した総合的な対策が必要です。「病院でもらった狭心症の治療薬を服用していても発作を繰り返してしまう。」と訴える方に漢方薬を併用していただいて、発作が全く起きなくなった例などはよく経験します。比較的作用の強いワーファリンやチクロビジンと併用しても飲み合わせはありませんので、ぜひご相談下さい。
狭心症・心筋梗塞を予防するには、動脈硬化を促進する高血圧や高脂血症、糖尿、肥満をコントロールすることが大切です。薬の服用だけに頼らずに過労や過度のストレスを避け、適度な運動と十分な睡眠を取って食物には気を配り、禁煙するなど、日頃からの養生も心がけましょう。
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